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札幌高等裁判所 昭和35年(く)20号 決定 1960年12月27日

少年 T(昭一六・一・二生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告理由は抗告人提出の抗告申立書記載のとおりであるからここにこれを引用する。

所論は要するに少年の本件非行は飲酒の上、群衆心理も加わり惹起されたものであり、現在深く反省している少年の将来は抗告人が少年の兄達と共に補導に努力するにより相当期間試験観察に付すべきであると強調する。

しかし一件記録により認められる本件非行の動機、態様、少年の性格及び行動傾向、年令、非行歴、交友関係、勉学に興味を失つて退学する決意で帰省した少年の非行前後の不健全な生活態度に加えるに保護者その他の家庭環境の少年の補導に対する熱意はこれを過少評価することは酷に失するとしてもその能力は繰返される少年の非行に鑑み甚だ心許ない感を抱かざるを得ない底のものであること等を綜合すれば少年に対する試験観察乃至在宅保護はもはやその限界を超えていると断定せざるを得ない。

原審は全く右と同一見解の下に少年に対し中等少年院送致の措置を執つたものであり、極めて妥当適正である。論旨は到底採用することができない。

なお、職権をもつて一件記録を精査した結果に徴しても原決定を取消さねばならない瑕瑾は存しないので、本件抗告はその理由がない。

よつて少年法第三三条第一項少年審判規則第五〇条に従い主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 矢部孝 裁判官 中村義正 裁判官 小野慶二)

別紙(原審の保護処分決定)

強姦保護事件(札幌家裁小樽支部 昭三五・一〇・二六決定)

少年 T

主文

少年Dを中等少年院に送致する。

理由

(非行事実)

少年はN、S等と共謀の上昭和三五年九月二一日午後一〇時頃余市郡○○町○丁目××劇場前路上においてY子(当一五年)が唯一人で居るを認め、同女を姦淫せんと企て、同女を附近○○公民館前草むらに連行し、その場に押倒し、交々手足を押え、口を塞ぐ等の暴行を加えその反抗を抑圧し順次強いて姦淫したものである。

(罰条)

刑法第一七七条、第六〇条

(要保護性)

本件非行の態様、記録に現われた少年の性格、年令、非行歴、交友関係、家庭における保護能力の限度等からみて再犯の虞れもあり、この際施設に収容して性格の矯正、情操の陶冶、育成を図る必要がある。

よつて少年法第二四条第一項第三号を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 谷弓雄)

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